暮らしの知恵
 

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暮らしの知恵

地下水の流れ・シュミレーション

2017年11月24日  (gantyan)
生き物の命を支える水循環
私たちやあらゆる生物は、大気と地盤を切れ目なく循環する水の恵み受け生命を維持しています。
太陽のエネルギーを得て蒸発した海水は水蒸気となって風により運ばれ、山にぶつかり雨や雪となって大地に降り注ぎ、地下にしみこみ地上に湧き出し湖や河川となってまた海に戻っていきます。この、絶え間なく続く水の循環によりあらゆる生命の活動は支えられています。
私たちが住む藤沢、茅ヶ崎も山、川、海のつながりの中で、自然が形成され、その中で様々な活動が繰り広げられてきています。
1 ss初冬の江の島を湘南平より望む(湘南の水循環を想像してみる)

水循環を知ることは、私たちの生活を支えている水資源のこと、人間やあらゆる生命を支えている水環境のこと、自然の姿をも変えてしまう水災害のことを知ることにほかなりません。人類は生活し文明を発展させていくために常に水循環について学び対処し続けてきています。
地球上には、土壌・岩石圏、自然の動植物が創り出す生態系、人間活動が創り出した人工系があり、その中を大気圏からもたらされた降水が蒸発散・河川流れ・地下浸透流・湧出流などとして移動し、海洋に回帰しています。人間や生物の活動は、大気と地盤を切れ目なく循環する水の恵みにより成り立っているのです。

水資源は枯渇しないのか?

地球上の水量はおよそ14 億km3 であり、97.5%は海水、淡水は2.5%です。淡水のうち80%近くは氷で、約20%は地下水です。最も人間が利用している河川水は1,200km3 で淡水のうちの0.004%に過ぎません。この0.004%の河川水は、全世界の人口を62 億人とすると一人当たりわずか約200 トンでしかないのです。
このように膨大でもない水資源を人類が営々と利用しているのに、石油など他の資源と違い枯渇することがないのはなぜなのでしょう?
人間活動に伴う水の利用とは、水を消費してしまうことでなく、生物が体内に取り込んだ水により老廃物を対外に流す現象とよく似ていて、水を利用しその水を汚し排出していることです。
この水が枯渇しないのは、蒸発、降雨、地表流出、地下浸透という系を通して10~15日に1回程度の頻度で循環しているからです。利水により汚れた水は、微生物などによる分解作用や蒸発という自然の機能により水質を循環システムの中で浄化されているのです。
(2010年12月19日 平塚市共済事業「森と川と海の環境を考える集い」(西岡 哲氏)より引用)
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流域の水循環概念図

水循環のより深い理解

水にかかわる問題は、生活圏における水資源のこと、豊かな自然の恵みをはぐくむ水環境のこと、洪水、土砂崩壊、高潮、津波などの水災害に関わる問題があります。
現在の人類の過度で野放図な水利用は、これまでの水循環システムを回復不可能なところまで破壊してしまうかもしれません。 私たちは健全な水循環を壊してしまわないように、協力して維持管理していくことが大事です。
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例えば日本の伝統的な稲作は、田越し灌漑などのきめの細かな水利用による水田を中心とした農業がおこなうことにより水循環を維持することにより自然環の保全に役立ってきました。私たちが目にする川は、水が流れているところだけで成り立っているのではなく、森や田畑と密接にかかわっています。
日本の風景は、農業と水とのかかわりの中で形成されてきました。日本の農業が豊かな土壌を誇ってこられたのは、第一に農業に依存したこの国土の土地利用があったからであり、小面積で一家が米も野菜も木も育て、牛や豚や鳥も飼い鎌と鍬の農業の伝統を維持してきたからです。人々は労働を山や土地に投入することにより、循環を維持してきたのです。(富山和子著「水と土と緑 伝統を捨てた社会の行方」)
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5 ss地表水と地下水の流れの様子 (山に降った雨は地下にしみこみ河川に湧き出していることがわかります。雨が降っていないのに川に水が流れているのは、ゆっくりと川底から湧き出してくる地下水によって支えられているのです。)

もう一つの地球をコンピュータ上に作る

水循環を目で見て確認することはできません。しかし、現代の計算技術を駆使すれば、もう一つの地球をコンピュータ上に作り出すことが可能になりつつあります。
自然の場(地形、地質、土地利用、気象、人間活動)を物理的にコンピュータ上に表現し(擬似自然)、水循環のすがたを再現・予測することが可能になりつつあるのです。
下図に日本列島全体の水循環の様子の一例として、関東・中部エリアの地表水・地下水の流動の様子を示します。
地形に従う水流の形が現在の利根川などの大きな水系と類似した形で再現され、地表面には河川ネットワークが形成され、地下水の流れが地形と地質に従って形成されています。江戸期以前には東京湾に注いでいた利根川の表流水は、現在では江戸時代からの利根川東遷事業により銚子から太平洋にそそいでいます。しかしながら解析結果をみると、地下水は利根川本来の流路にしたがい東京湾に向かっていることが見て取れます。
人工的に河川の流れを変えても、地下水の流れはどうやら本来の利根川の流れに従って流れているようです。
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神奈川県の水循環はどうなっているのだろう?

横浜国立大学佐土原研究室の神奈川拡大流域圏モデルや、秦野市が構築している秦野盆地の水資源環境管理のための秦野モデルなどが構築されてきていて、地表水、地下水が四季を通してどのように流動しているかが明らかになりつつあります。
神奈川拡大流域圏モデルの対象地域は,相模川流域,丹沢山地,金目川流域で,周辺流域を含む総面積約5,700km2 です。東西方向は神奈川県横浜市から静岡県富士市に至る約100km,南北方向には相模湾,駿河湾の近海域から山梨県甲府市南に至る約60km です。
図の流線は、地上に降った雨が、地盤中を浸透し地下水となって,再び地上へ湧出する間の3 次元流動経路を2 次元平面内に投影表示したものです。長い滞留時間をかけて地下深層へ浸透する経路,短い滞留時間で浅層中を移動する経路等が含まれています。
地下水の流動は相模川を境に西側と東側で流動経路長の特徴が異なり,大局的に西側は長く,東側は短い傾向が読み取れます。流動経路の長い西側の地下水流動は,そのほとんどが富士山麓,丹沢山地に端を発しており,神奈川県域の特徴的な水資源俯存傾向を視覚的に理解することができます。
地下水の流れは,地形起伏と調和的であるところとそうでないところが見られますが,低地へ流下する過程で水脈が束ねられ,相模川,酒匂川,鶴見川等の主な河川を支えている様相が明瞭に描き出されています。
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今後の展開

2011 年3 月11 日の東日本大震災による津波は、様々な意味で自然災害のリスクに対する備えの再考を迫るものとなりました。神奈川県では津波ハザードマップを作成し、市民に注意を喚起してきています。洪水に対しても同様にハザードマップが作成されています。
近年の気象災害を振り返ってみると、線状降水帯の発生によりこれまでの経験から想定できないような極端豪雨が発生した例にみられるように、異常現象の起きる時間・規模なども予測は不可能なものが多くあります。
そこで、コンピュータ上に構築された水循環モデルに極端豪雨など様々な条件を与え、将来起こり得る環境変化や災害の位置・規模を予測し、事前対策を立てるための定量的資料を提出することをできるようにしていきます。
水循環モデルの解析結果を、住環境の快適性・安全性に役立てるようになりたいと考えています。
8 ss(試計算)
☆ 水循環シミュレーション技術については、下記のサイトをご覧ください。

URL:http://www.getc.co.jp

付録:水循環基本法について

流域の健全な水循環を維持しこれからも持続的に水を利用できる社会としていくために、地下水を含む水が「国民共有の貴重な財産であり、公共性の高いもの」と位置付け、2014 年7月1日に水循環基本法が施行されました。これによりようやく我国の水政策に関する基本的な理念が示され、今後流域の水の利用・保全に係る法律が整備されていくものと期待されます。これまでの水に関する行政は、河川は国土交通省、農業用水は農林水産省、上水道は厚生労働省、水質等については環境省などに分かれ、統合的な運用管理がなされにくい状況にありました。
水循環基本法の目指すところは、水循環に関する施策を総合的かつ一体的に推進することにより健全な水循環を維持し、また回復させ、我が国の経済社会の健全な発展及び国民生活の安定向上に寄与することにあります。
水循環については、水が、蒸発、降下、流下または浸透により、海域等に至る過程で、地表水、地下水として河川の流域を中心に循環すること、健全な水循環とは、人の活動と環境保全に果たす水の機能が適切に保たれた状態での水循環と定義しています。
さらに、基本理念として、①水循環の重要性、②水の公共性、③健全な水循環への配慮、④流域の総合的管理、⑤水循環に関する国際的協調について条文化しています。
今後流域の総合的管理を進めるうえで、日々変化する地表水と地下水の動きをとらえることができる水・物質循環情報基盤の整備を進めることが必要になります。