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『火焚き地蔵』箱根町 芦之湯 中島淳一

2017年12月5日(記事:江ノ電沿線新聞12月号)
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火焚き地蔵
以前、箱根町芦之湯の六道地蔵という元箱根石仏・石塔群を代表する大きな磨崖仏を紹介したが、今回は同じ石仏群に属する磨崖仏で、精進池のほとりに安置される火焚き地蔵である。
 この芦之湯付近は往古より箱根越えの道として使われた湯坂道の最高地点で、街道一の難所であった。そのため冥土の入口といわれる賽の河原や、地獄へと続く特別な場所とされ、中世前期に特別な地蔵信仰の高揚があり、周辺の岩に地蔵菩薩を彫るなど庶民も含め自由な形での信仰の表現が可能だったようである。
 この火焚き地蔵は高さ一二四センチの岩の面に、先に中央の像、少し後に小さな二体の地蔵菩薩を掘り出したもので、tikuna 12かつてこの地区では家族に亡くなった人があると、四十九日のうちにこの地蔵尊の前で送り火を焚き、死者の霊を山へ送る「浜降り」という風習があったことから火焚き地蔵の名がついたと伝わる。また地蔵尊の横に応長元年(一三一一)の造像願文が刻まれており、このことから別名応長地蔵とも呼ばれている。
 日本を代表する観光地箱根に在りながら訪れる人もあまり無く、少し寂しそうな笑顔を私にだけ見せた、日本を代表する中世前期の美しいお地蔵さまである。
 
※江ノ電沿線新聞2017年12月号掲載コラムをえのぽに転載しました。
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