江の島の植物・ヤブミョウガ
2018年8月9日 写真&文: 坪倉 兌雄

ヤブミョウガ(学名Pollia japonica)はツユクサ科ヤブミョウガ属の多年草で、山地の林内などに生え、わが国では関東地方以西、四国、九州、沖縄に分布します。江の島では参道わきや海側の林内、広場の山側などで普通に見ることができます。細い白色の地下茎を横に伸ばして繁殖し、高さは50~90㌢で茎には細毛があります。葉は長楕円形で茎の中程に集まって互生し、長さは20~28㌢、幅は3~7㌢で先端はとがり、表面はざらつきます。花期は8~9月、茎の先に円錐状の集散花序を数段につけます。花の径は約8㍉で萼片3個と花弁3個からなり、いずれも白色で両性花と雄性花が混在する一日花です。両性花の白い花柱は雄しべより長く突き出てよく目立ち、雄性花の花柱は退化して短く、6個の黄色い葯が目立ちます。実をつけると葉を落とします。果実は液果で約5㍉の球形で、熟しても裂開することなく黒色に熟します。





和名の「藪茗荷」は藪に生えて、草姿がミョウガ(茗荷)に似ることによるとされています。藪とは一般的に草や木が密生している場所をさしますが、ヤブミョウガはこのような場所には生育していません。林内のやや湿った場所に地下茎を伸ばしてよく群生するので、これを藪に例えて名づけられたものと考えられます。ヤブミョウガは食用にはなりません。食用にされる「ミョウガ・茗荷」はショウガ科の多年草で、偽茎は40~90㌢、広披針形の葉を互生し、夏に根本から芳香のある広楕円形の花穂を出します。「偽茎」とは茎のように見える部分が、多数の葉鞘が重なってできたものをいいます。このミョウガの花序と若芽は薬味や漬物として用いられます。
