江の島の植物・ナガミヒナゲシ

2021年7月10日 写真&文: 坪倉 兌雄
mamakonoshirinugui1江の島の空き地に咲くナガミヒナゲシの花
ナガミヒナゲシ(長実雛罌粟)Papaver dubiumはケシ科ケシ属の越年草で、地中海地方原産の帰化植物とされ、江の島の広場や空き地、道路わきの植え込みなどで普通に見ることができます。橙色の美しい花を上向きに開き、離れた場所からでもよく目立ち、繁殖力旺盛で痩せ地でもよく育ちます。根生葉はロゼット状で柄はなく、長さは10~20㌢、2回羽状複葉で深裂します。茎葉は互生して1~2回羽状に深裂し、葉の両面には毛が密生します。花期は4~6月、茎の上部の花茎が伸びて、その先端に蕾を1個下向きにつけます。蕾は2枚の萼片に包まれ、茎や蕾の表面には長い開出毛が密生します。開花時、花茎は約20㌢に伸び、先端が上向きになって萼片は脱落し、朱赤色の4弁花を上向きに開きます。
mamakonoshirinugui2茎の上部から花径がのびて蕾は下を向く
mamakonoshirinugui3柱頭は円盤状で周りを雄しべが取り巻く
mamakonoshirinugui4根生葉はロゼット状
mamakonoshirinugui5開出毛は白く密に生える
mamakonoshirinugui6空き地に咲く
花は直径3~6㌢の朱赤色、よく目立ち美しい景観をつくりますが、一日花で夕方には花弁は落ちてしまいます。花の雌しべに花柱はなく、子房の上部(柱頭)は円盤状で、7~8本の放射条があります。この柱頭の周りを取り囲むように、雄しべが多数つきます。果実は蒴果で長さは2㌢、幅8㍉の円柱形。果実の中には小さな種子が多数、実ると種子が飛び散ります。
 ナガミヒナゲシの名の由来は、長い実をつけ花が同じケシ科のヒナゲシ(雛罌粟)に似ることによります。ケシ科の植物ですが、モルヒネの原料となる「ケシ」とは異なり毒性はありません。しかし種子を大量に出してよく繁殖することから、根などから出る物質アレロパシー(他感作用)による他の植物への影響を考慮する必要があるとされています。 
check 2021年7月10日