続・湘南のお地蔵さま-4 『愛の地蔵尊』
2017年4月5日 (記事:江ノ電沿線新聞4月号)
『愛の地蔵尊』 大磯町 虫窪 中島淳一 |
今回紹介するお地蔵さまは、その名も「愛の地蔵尊」。安置される場所は、「湘南」という地名発祥の地といわれる大磯町の、虫窪という地区である。 大磯といえば海のイメージが強いところだが、この地蔵尊の安置される辺りは高台で富士見平と呼ばれ、その名の通りミカン畑越しに富士山がとても美しく眺められる場所である。 このセンセーショナルな名前を持つお地蔵さまには、次のような話が伝わる。 江戸時代、お伊勢参りに行ったある村の三人の男性がお参りを無事すませ、帰りの道で大井川の川止めにあった。しかし川止めは何日も続き、若妻を村に残してきた一人の若者は耐え切れず、掟を破り川を渡り始めたが、濁流に呑み込まれてしまった。 数日後、村に帰った二人の男性はその若妻に本当のことが言えず、川止めの止むのを待てず、伊豆を廻って大磯の浜に船で帰ると言っていたと伝えた。若妻は、来る日も来る日も海の見える台地で夫を待ったが思いはかなわず心乱れ、家に帰らずこの地をさまよう身となった。 後の時代に、この話に感動した一人の女性が私費を投じてここに愛の地蔵尊を建立し、この若妻を供養したという。 この地は「泣きの原」とも呼ばれ、若妻の美しい心を今に、そして将来に伝えている。 (「富士見平」に行くバスの本数は少ないので注意)

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※江ノ電沿線新聞2017年4月号掲載コラムをえのぽに転載しました。
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