続・湘南のお地蔵さま-3 『埋れ木地蔵』 

2017年3月1日(記事:江ノ電沿線新聞3月号)

『埋れ木地蔵(うもれぎじぞう)』 鎌倉市 稲村ガ崎  中島淳一 

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 埋れ木地蔵(うもれぎじぞう) 

    江ノ電稲村ヶ崎駅から線路沿いに藤沢方面へ戻り、老人ホーム「鎌倉静養館」横の踏切を渡って、
この建物沿いに左折する。
百メートル程行った左側にある、道路とほぼ平行な狭い石段を登ると、小さなお堂の中に仲良く170301 inamuragasaki
並んだ三体の埋(うも)れ木地蔵と出会う。
仏像の世界で、「埋木地蔵」といえば、京都広隆寺に安置される平安時代前期の地蔵菩薩立像が
有名だが、古来よりその霊験あらたかなることで知られたお地蔵さまである。
   同じ名前でここ鎌倉に祀られるこのお地蔵さまは、三体とも同じ現代作家の作品のようだが、
そっと目を閉じ、優しく合掌し、中には首を少し傾げ、微笑んでいるお地蔵さまもいらっしゃる。
それぞれ大きさや形の違う三本の埋れ木から、お体だけでなく、慈悲の光(光背)も含めお地蔵さま
の姿を彫出する技量は、お地蔵さまの心に寄り添うことのできたものだけの特権であろう。
   このお地蔵さまのすぐ隣の建物は「鎌倉不識庵」といい、臨済宗の僧侶で、精進料理を一般の
家庭に広めた故藤井宗哲氏の料理塾で、現在はその奥様と娘さんが、宗哲氏の志を引き継いでいる。
また、すぐ近くには近代日本の代表的な哲学者である西田幾太郎が住んでいた建物「寸志荘」
(外部からの見学のみ可)もあり、文化の香り漂う鎌倉らしい静かな谷戸である。

                                               ※江ノ電沿線新聞2017年3月号掲載コラムをえのぽに転載しました。
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