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趣 味・歴史

「ウォーナーの謎のリスト」上映会とトークイベント
      ―鎌倉市川喜多映画記念館ー

2018年12月5日  Itatsu
鎌倉市川喜多映画記念館で、「ウォーナーの謎のリスト」の上映とトークイベント「鎌倉を空襲から守ったウォーナー」が開催された。(2018年11月22日(木))

1ラングドン・ウォーナー
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「ウォーナーの謎のリスト」は、米国人美術家ラングドン・ウォーナーやイエール大学教授・朝河貫一ら、戦時下、日本の文化財を保護するために奔走した人々に迫り、文化を残す意義を訴えたドキュメンタリーである。(編集・監督:金髙謙二)


鎌倉駅西口(江ノ電側)の時計塔小公園に戦争から歴史遺産を救ったラングドン・ウォーナーの碑があり、碑文には「文化は戦争に優先する」と書かれている。1987年古都保存法の制定20周年を記念して建てられた。

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ウォーナーは、日本の文化財151か所のリストを作成したといわれている。ハーバード大学教授で日本の古美術の権威だった人物である。日本では岡倉天心の薫陶を受けている。
このウォーナーが、太平洋戦争の時、日本の文化財への爆撃制限を記したリストを作成し、大統領の裁決を得て米軍の関係部署に配布され、戦後多くの文化財が救われたと語り継がれてきた。これがいわゆる「ウォーナーリスト」である。

5中宮寺弥勒菩薩像
6姫路城
 
「ウォーナーリスト」は151か所あり、東京42件、京都40件、奈良19件、大阪6件、兵庫6件、和歌山5件、福岡5件、神奈川4件、以下1~3件が全国20県にわたり、京都、奈良を中心に、鎌倉、宮島、日光、伊勢神宮、出雲大社、東京(江戸文化)などが挙げられ博物館、図書館なども重要視されている。
ちなみに神奈川の文化財は、鎌倉2件、小田原2件で、鎌倉は、円覚寺・舎利殿と大仏がリストアップされている。

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今回の映画のタイトルが、「ウォーナーの謎のリスト」となっている。謎の意味は、ウォーナーのリストは、原爆を含め爆撃制限に本当に効力があったのかという疑問である。ウォーナーは残した方が良いという文化財リストを作成したのであるが、直接戦争の被害から文化財を保護できたわけではない。原爆投下、空襲など軍事戦略の危うい紆余曲折するプロセスをとりながら、様々な関係者の思惑や判断によって爆撃計画が実施されたのであるが、結果として、おおむね、ウォーナーのリストの文化財は被害を受けずに済んだ。このあたりの奇跡的なプロセスの謎をウォーナーを巡る関係者との絡ませながらドキュメンタリ映画として事実を明らかにしてゆく。

日本の文化財を守ろうとした3人のエピソード
◆エピソード①→エリセ-エフ
ウォーナーとはハーバードで親交があり、またウォーナーとともに軍の文化遺産保護メンバーでもあった日本通のロシア人のセルゲイ・エリセ-エフ(ハーバードのアジア研究機関の所長)が、マッカーサー将軍に神田神保町を空爆の目標から外すよう進言した。(このことは、司馬遼太郎「街道が行く」に書かれている)。確かに、神田神保町はそこだけ焼け残った。
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◆エピソード②→朝河貫一
1937年日本人初のイエール大学教授となった朝河貫一が、ウォーナーと組んで戦争回避のためにルーズベルト大統領から天皇への親書を創案したが、親書が天皇に届いたのは日本が真珠湾奇襲を仕掛ける30分前だった。
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◆エピソード③→スティムソン
原爆投下決定暫定委員会の委員長を務め、広島と長崎の原爆投下を決定したといわれる陸軍長官ヘンリー・スティムソンは、当時、原爆投下第一候補だった京都には落とすことを許さないと頑なに拒否し、京都は破壊を免れたといわれている。朝河とも親交があって日本の情報を得ており、戦前、京都に二度訪れ良き理解者であった。(歴史家、矢吹晋氏インタビューによる)

など、知られざるエピソードや関係者31の証言が織り込まれ、戦争と文化財の不思議なな世界に引き込まれてゆく。
(以上の記述は、本映画の解説パンフ「ウォーナーの謎のリスト」を参照した)
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上映後、トークイベントとして「鎌倉を空襲から守ったウォーナー」と題する、鎌倉同人会理事の内海恒雄氏による講演があり、文化財、景観を含め鎌倉を丸ごと遺産として守ってゆく大切さを語られていた。
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日本人以上に人類の遺産として日本の文化財を守ろうとしたウォーナーたちの熱意が伝わってくる映画であり、文化遺産は未来の羅針盤でもあることを改めて感じさせてくれる良い企画であった。
markenopo 2018年12月5日