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趣 味・歴史

地域の宝・旧三觜八郎右衛門家住宅の価値

2019年 8月13日  (hiramechann)
 藤沢市羽鳥の三觜家は家祖が室町時代前期まで遡る旧家です。代々八郎右衛門を襲名し、江戸時代には羽鳥村の名主を務めました。13 代八郎右衛門が明治11年頃に建てたという記録が残る現在の建物は、少し前まで公開されていて何度か見学する機会がありましたが、先月末、藤沢市明治公民館で、小沢 朝江教授(東海大学工学部建築学科)の同タイトルの講演を聞いて、改めてこの建物の魅力を知りました。小沢教授のご協力を得て、その一端を紹介します。
mituhasike gaikan

三觜八郎右衛門家住宅の特徴(講演会資料 ⇒ こちら
 13 代八郎右衛門が明治11年頃に建てたという記録が残る現在の建物は、その3代前から用材の準備を始めたと伝えられています。(講演会資料「建物の年代」は ⇒ こちら
【1】木造2階建て、1階は六間取りの平面。2階にも床・棚を備えた座敷を置く。広い土間とミセは、醤油の販売にも用いる。
mitsuhasike 1F1F 平面図
mitsuhasike 2F2F 平面図
 
【2】外観
   屋根:切妻造、桟瓦葺。2階軒は出桁造。
   1階:土間の入り口に大戸(民家風)。その外側に素通しの欄間と格子戸(商家風)。
   2階:大正8年の写真では、板張りの壁や、アーチ形の鎧戸など洋風の意匠を備えていた。
mituhasike 8nenn大正8年 嫁取りの際の古写真

【3】意匠
 ・オミセ・オザシキ:大黒柱は一般的な家屋の約2倍、
      その上手の長者柱は約1.5倍の太さで、欅材の長者柱は屋根の棟まで届く通し柱(総長10m以上)。
 ・オク・シチジョウ:柱・長押(なげし)は松の良材。
      東側に床と棚を設け、内法長押の上に細身の天井長押を廻らし、千鳥の釘隠を打つ。
 ・2階座敷:2段の長押、欄間、天井は1階オクと共通するが、黒柿の多用、皮付材の使用など数寄屋風。
mitsuhasike nagesi
2段の長押と釘隠
mitsuhasike tenjou
オク 天井

三觜八郎右衛門家住宅の価値

 1.材と造作の質が高い

  良材をふんだんに用いる。引手・釘隠などの金具や、天井・欄間の意匠に凝る。
 2.2階座敷の早期の例
  明治期以前には、農家で2階建ては珍しく、2階に座敷のある建物は少なかった。
 3.洋風や商家風を加味した外観
  アーチ窓・大壁の使用:明治初期の擬洋風に近い。三觜家の先進性を示す。
  切妻造・瓦葺の屋根、出桁の軒、入口~土間の造り:商家風。
 4.家の歴史を伝え続ける工夫
  土間・インキョベヤの柱:元和年間(1615-1624)建築の先代の建物の部材を用いる。
  関東大震災後の改修:差鴨居がない場所を鉄筋と斜め木摺で補強。小屋裏に水平ブレースを付加。

 
 講演では最後に、「古い建物のない町は、思い出のない人間と同じだ」という東山魁夷の言葉を紹介されました。
明治初期、学制が布かれる前に創設され、政治、実業、教育の各界へ多くの人材を輩出した「耕余塾」と同時期に、家の威信をかけて建てられた住宅です。「登録有形文化財」の場合、「修理・改変」について所有者(管理者)が届け出をすれば可能だということですが、地域住民の声が大きくなることによって、何らかの方法で保存に向かうこともあるそうです。会場にいた方も、「地域の宝・旧三觜家住宅」の魅力を再認識し、保存を呼びかけたいという思いを共有されたと思います。
【追記】「国登録文化財、解体へ」という記事が、8月9日号のタウンニュース湘南版に掲載されました。
              ( 詳細はこちら⇒ )
 
記事編集に際しては諸権利等に留意して掲載しております。   markenopo 2019年8月13日