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趣 味・歴史

続・湘南のお地蔵さま(34)『袖引地蔵』

2019年10月7日  (江ノ電新聞10月号)
『袖引地蔵』鎌倉市 材木座 中島淳一
191007 sodehikijizou袖引地蔵  
鎌倉駅東口から九品寺循環のバスで十分程の五所神社で降りる。少し先の路地を左折すると正面に時宗向福寺(こうふくじ)がある。本堂と庫裡だけの静かな佇まいの寺だが、鎌倉三十三所観音霊場第十五番札所で、南北朝時代の阿弥陀三尊像を本尊とする。本堂手前に小さな墓域があり、入口近くに二体の石のお地蔵さまが安置される。その左側の像が袖引地蔵である。両手で宝珠を持ち、優しいお顔で反花座(かえりばなざ)に坐す。その名の由来として次のような伝承が伝わる。
 この地蔵を夫婦で信仰した地元の漁師が海で命を落としたが、地蔵の力で生き返った。続けて今度は食あたりで落命したが再度生き返った。ただその代償に地蔵は閻魔王に錫杖をとられてしまった。しかし災難は重なり、今度は大津波で夫婦共に亡くなった。三度目の今回はさすがに閻魔王も許さず、仕方なく地蔵は二人を自分の袖に掴まらせ冥途を脱出した。それ以来錫杖を持たぬこの地蔵は袖引地蔵と呼ばれるようになったという。
 この伝承は寺に伝わるものではないと聞く。地域に残る口承なのであろうか。いずれにしても袖引地蔵の限りないやさしさと、慈悲の心が痛いほどに伝わる話である。 
 
 
  
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