藤澤浮世絵館展示「最強!? 相模武士の物語と浮世絵」

2020年3月4日(取材・記事:Tanbakko)
藤澤浮世絵館の企画展示コーナーでは現在「最強!?相模武士の物語と浮世絵」が展示されています。中世以降、力を増していった東国武士団の中で、相模の武士団は鎌倉幕府成立前後からその存在感を強めていき、浮世絵にもさまざまな形で描かれています。

今回の展示では、さまざまな形で描かれた「武者絵」「合戦絵」などの浮世絵を展示するとともに、相模武士団と関係の深い「大庭城址」からの出土品なども展示されています。
sagamibushi 1企画展示コーナーのテーマは「最強!?相模武士の物語と浮世絵」。さまざまな形で描かれた「武者絵」「合戦絵」などの浮世絵が展示されています。   
 
それでは、企画展示コーナーに展示されている浮世絵のいくつかを紹介していきましょう。
 
sagamibushi 2「後三年合戦絵巻」の写本
sagamibushi 3絵巻のなかの部分図
 
企画展示コーナーの入り口のところに「後三年合戦絵巻」の写本が展示されています。永保3年(1083年)に東北地方の豪族・清原氏の内紛に端を発した「後三年の役」は、奥州に勢力を拡大しようとした源義家が、相模・武蔵両国の武士団を率いて闘ったことでも有名です。結果として奥州藤原氏の台頭の契機となった戦乱でした。
 
sagamibushi 4勝川春亭の「石橋山合戦」(※「浮世絵館だより 2020年2月 Vol.11」より転載しました。)
sagamibushi 5歌川国芳の「時世石ばし山 頼朝ふし木かくれの図」(※「浮世絵館だより 2020年2月 Vol.11」より転載しました。)
 
勝川春亭の「石橋山合戦」(上)と、歌川国芳の「時世石ばし山 頼朝ふし木かくれの図」(下)です。

勝川春亭の「石橋山合戦」は、源頼朝の伊豆挙兵に端を発する「石橋山の戦い(1180年)」の戦闘場面を描いたものです。頼朝軍と大庭景親ら平家軍との戦闘場面が描かれています。

石橋山の戦いは頼朝軍の敗戦に終わりますが、そのエピソードの一つに「頼朝の伏木隠れ」があります。石橋山の合戦に敗れて山中の伏木に隠れている頼朝を、捜索していた梶原景時が「だれもいない」と味方に告げて頼朝を助けたというエピソードです。歌川国芳の「時世石ばし山 頼朝ふし木かくれの図」は、そのエピソードを美人画に仕立てたもので、「見立て(パロディー)絵」と言われます。

企画展示コーナーでは浮世絵の他に、大庭城の発掘調査で出土した「かわらけ」や、発掘調査の経緯がパネルで展示されています。近年、大庭城を学術的に評価する動きが研究者の間で高まってきており、藤沢市を代表する文化遺産となる可能性を秘めているとのことです。
sagamibushi 6大庭城発掘調査で出土した「かわらけ」が展示されています。
sagamibushi 7大庭城発掘調査の経緯がパネル展示されています。
常設コーナーでは、江の島コーナーの「民衆の絵画 泥絵の世界」が見どころです。「泥絵」とは、泥絵具という精製度の低い顔料に胡粉(貝殻から作られる白色の顔料)を混ぜた絵具で描かれたものです。「民衆の絵画」とも言われていて江戸中期から明治初期にかけて土産品として流行しました。舶来の覗き眼鏡を通して楽しむ「眼鏡絵」や、覗き眼鏡で楽しむために左右逆さまに描かれた作品もあります。
sagamibushi 8江の島コーナーでは泥絵や覗き眼鏡などが展示されています。
そのほか、東海道五十三次コーナーでは、「国貞の美人東海道」全56枚の内、「藤川ノ図」から「京都ノ図」までの19枚が展示されています。3回に分けて展示された「国貞の美人東海道」も今回の展示で最後となります。

また、藤沢宿コーナーでは、「江戸の鎌倉観光パンフ~鎌倉名所記」が展示されています。

◆学芸員によるみどころ解説が2020年4月5日(日)に行われます。 
 ・日にち:2020年4月5日(日)
 ・時 間:11:00~/15:00~ 2回開催(各回30分程度)
 ・会 場:藤澤浮世絵館
 ・定 員:各回40名(当日先着順) ※申込不要・参加費無料
 ※新型コロナウィルス感染予防対策のため、みどころ解説は中止となりました。
sagamibushi 9学芸員による見どころ解説(この画像は2月22日に開催されたときのものです)
 
なお、藤澤浮世絵館の公式ホームページ(下記)では、展示作品の解説が展示期間中掲載されています。あわせてご覧ください。
    http://fujisawa-ukiyoekan.net/collections/top.html

※新型コロナウィルス感染拡大防止に向けて2020年3月6日(金)から3月31日(火)まで藤澤浮世絵館は
 休館となります。藤澤浮世絵館のHPにてご確認ください。

 
  
記事編集に際しては諸権利等に留意して掲載しております。   markenopo 2020年2月28日