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所得格差とタックス・ヘイブン

<2018/1/26 取材・記事:Tanbakko>
今年5月に19周年を迎える善行雑学大学で、「先進資本主義経済の構造変化と反グローバリズム~所得格差とタックス・ヘイブン」という講演を聞きました。講師は横浜国立大学名誉教授の新飯田 宏 先生です。新飯田先生の善行雑学大学での講演は今回で4回目です。
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本講演で新飯田先生が明らかにしようとされたのは、民主主義の根底をおびやかしかねない所得分配の不平等を経済構造の変化から説明することと、所得分配の不平等化を促進しているのがタックス・ヘイブンであるということです。
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リーマンショックから9年、現在は株高で経済が好調なように見えますが、経済成長率は低迷し、リーマンショック以前の水準には戻っていないのが先進資本主義国に共通の現象です。それはなぜなのでしょうか?

新飯田先生は、「労働力人口の減少」「賃金デフレの傾向」「設備投資の低迷」といった先進資本主義国に共通してみられる構造的要因により、経済構造が変化し、総需要が低迷していることにその原因があると説明されました。

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トマ・ピケティは「21世紀の資本」で、
 ・資本の収益率(r)がGDP成長率(g)より大きいならば、資本分配率(α)は上昇する。
 ・先進国経済は経済構造の変化を通して総需要が総供給に及ばずGDPは低下している。
 ・この傾向は今後も続くと予測されるので、r>gの状況が成立して格差は拡大していく。(※)
という「格差拡大命題」を打ち出しました。
※本講演で新飯田先生は、「rがgよりも十分に大きいならば(r≫g)」と、格差拡大条件を修正する必要があると説明されました。
 
所得格差拡大傾向は先進国経済の将来にとって好ましくないことは明白であり、所得税や資産課税、さらには相続税率の累進度を高めていく対策が必要であると強調されました。
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2016年5月に「パナマ文書」、2017年11月に「パラダイス文書」が公開され、タックス・ヘイブンによる税金逃れが全世界的に行われていることが明らかになりました。所得格差を是正するための原資である政府税収が、タックス・ヘイブンに流出していることで所得格差が増幅されている実態をグラフ等によって説明されました。
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タックス・ヘイブン問題が投げかけている根本的な問題は、自己利益の増大のみを至上目的として暴走する市場システムを民主主義的なルールで規制することが可能かどうかという問題であり、また市場競争が有効に機能するための「市場経済の倫理性」や、市場に参加する経済主体の「タックス・モラル」の問題でもある。そして、多様なタックス・ヘイブン国の性格から一律の対策を講じることは有効ではなく、むしろ、タックス・ヘイブン国に存在するヘッジファンドの投資行動に厳しい規制を課していくことが有効なのではないか、と私案を述べて講演を締めくくられました。

≪講演を聞いて≫
1931年1月生まれの新飯田先生。御年87歳をお迎えになるとは思えないほどの熱の入った講演でした。
所得のみならず様々な分野での格差拡大をいかにして是正していくかが、私たちの直面している大きな課題であることを改めて認識しました。また、タックス・ヘイブンに対しては、国際社会全体での英知を結集した取り組みが求められていると思いました。
講演のなかで、「トマ・ピケティはノーベル賞を受賞するだろう」「イギリスはここ1年くらいのうちにEUに戻ってくるのではないか」と述べられていたことが印象に残りました。
 
check 2018年5月8日