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善行雑学大学『遺伝子解析と遺伝子操作で実証する進化』

2019年8月26日(取材・記事:Tanbakko)
第243回善行雑学大学のテーマは『遺伝子解析と遺伝子操作で実証する進化』でした。講師は東京大学名誉教授・特任研究員の赤坂甲治氏。多様な海洋生物の特徴を活用して、基礎生物学から医薬・バイオに波及する生命科学を研究されています。本講義では、遺伝子解析と遺伝子操作についてのお話しに加えて、最新の進化学の研究成果をもとに無生物から生物への進化のしくみやその証明方法などについてもお話しいただきました。
idenshi 01最新の進化研究について市民の視点でお話しいただきました 
 
講義は、「地球や海が誕生し化学進化によって生命が誕生するまで」の第一部、つづいて「進化を促進するしくみ」の第二部、そして「実験で進化を実証する」の第三部に分けて行われました。

「地球や海が誕生し化学進化によって生命が誕生するまで」の第一部では、科学者がさまざまな発想で進化のしくみを研究し、どのように問題に立ち向かい謎を解明してきたかをお話しいただきました。地球の地殻や海が形成された時期の特定法、原始大気組成の推定法、無機物から有機物が生成されることの証明法、化石がないのに原始生命体が存在していたことを証明する方法など、科学者たちの苦闘の跡をスライドを使って分かりやすく説明していただきました。
 
idenshi 02科学者はさまざまな発想で進化のしくみを研究してきました
「進化を促進するしくみ」の第二部では、次世代シーケンサー(DNAの塩基配列を読み取る装置)の登場であらゆる生物のゲノム(遺伝情報)が瞬時に解析できるようになり、あらゆる生物のゲノムを比較することが可能になったこと(比較ゲノム)、比較ゲノムにより進化の道筋が明らかになってきたこと、比較ゲノムと発生生物学が進化学に大きな変革をもたらし、さらには実験で進化が実証できることまで可能となってきたことなどをお話しいただきました。

多様な多細胞生物は姿形が違っていても同じ種類の遺伝子をもっていること、脳をつくる遺伝子を欠失したハエには脳ができないがヒトの脳をつくる遺伝子を導入すると脳の形成が回復すること、遺伝子調節ネットワーク内の遺伝子の階層性は会社組織に似ていることなど、興味深いお話しをたくさん聞くことができました。
idenshi 03比較ゲノムと発生生物学は進化学に大きな変革をもたらしました
「実験で進化を実証する」の第三部では、ダーウィンフィンチの嘴の太さと長さにかかわる遺伝子を操作して嘴の進化を再現する実験、ヘビの長い胴部は実は胸部であり胸部形成にかかわる遺伝子を強制発現させたマウスをヘビのような体にする実験など、進化を実証する実験のいくつかの事例を説明していただきました。ニワトリの首がマウスの首よりも長くなるしくみや、昆虫の腹部には肢がないがエビの腹には肢がある分子機構のお話しなども興味深いものがありました。
idenshi 04質疑応答も活発で制限時間を超過するほどでした
【講義を聞いて】
文科系出身者の私にとっては難しい内容でしたが、スライドをふんだんに使い、時にはユーモアを交えながらの講義には圧倒されました。「科学者は考えた」というスライドが何度か映し出されましたが、科学者たちがお互い切磋琢磨しあいながら、さまざまな発想で進化のしくみを研究してきたことがよくわかりました。

講義の中で、遺伝子調節ネットワーク内の遺伝子の階層性は会社組織に似ているというお話しがありました。遺伝子の世界では専門職の平社員が重要な役割を果たしていて、管理職が変な指令を出しても平社員が会社を立て直すとのこと。どこの世界にあっても「専門技能をもつ平社員」がその組織を支えているんだなあと改めて思いました。

善行雑学大学のホームページ⇒https://zengyo-zatsugaku.jimdofree.com/
 
    
記事編集に際しては諸権利等に留意して掲載しております。   markenopo 2019年08月26日