江の島の植物・落葉高木 ≪エノキ≫

2015年2月18日  (写真&文:坪倉 兌雄)
150218-enoki-1樹皮は灰褐色で厚く斑点があるエノキ(榎) Celtis sinensis var. japonica
ニレ科エノキ属

エノキは本州から九州に分布する落葉高木で潮風に強く、江の島では神社境内や裏参道山側などで見ることができます。雌雄同株で樹形が美しく、枝ぶりがよく大木に生長します。樹皮は厚く灰黒褐色で斑点がありざらつきます。葉は互生し長さは4~10㌢、幅3~6㌢の卵形または楕円形で質は厚くて両面ともざらつき、基部はくさび形で左右不相称、ふちの上部に鈍鋸歯があり、葉の先端は尖ります。葉脈は目立ちますが、側脈は鋸歯の先端には達しません。4~5月、若葉と同時に淡黄褐色の小さな雄花と両性花を開きます。雄花は本年枝の下部につき4個の花被片に雄しべ4個、両性花は上部の葉腋に1~3個つき、花被片は4個で、雄しべ4個と雌しべが1個あり、花柱は2裂します。
果実は核果で6~8㍉の広楕円形または卵状球系で、10月頃には赤褐色に熟し食べられます。

150218-enoki-2雪の中のエノキ(亀ヶ岡広場で25.2.9) 150218-enoki-3エノキの若葉(亀ヶ岡広場で25.5.12)
150218-enoki-4葉は互生し上部に鋸歯がある 150218-enoki-55左右不相称で裏側の葉脈が目立つ 150218-enoki-6花後、球形の小核果を結ぶ

名前の由来は、果実を小鳥がたべることから餌(エ)の木、よく燃えるので燃木(モエキ)からの転、農具の柄(エ)に用いたことからエノキ、などの諸説があります。エノキは大木に生長して樹冠を張り、その樹形が美しいことから、庭木や公園樹として用いられていますが、かつては一里塚にエノキを植えたとされています。
安土桃山時代に織田信長は安土から京都に至る街道を整備して一里ごとに塚を築き、そこにエノキを植えたのが一里塚のはじまりとされ、江戸時代には日本橋から京都まで、街道の両側に一里ごとに土を盛り、塚を築いて里程の目標とし、エノキやマツ(松)を植えたとされています。

エノキは万葉集にも一首詠まれています。
  吾が門の 榎(え)の実もり食(は)む 百千鳥 千鳥は来れど 君そ来まさぬ  (巻第16 3872、詠人未詳)