江の島の植物・常緑高木≪ヤブニッケイ(藪肉桂)≫

2015年7月8日  (写真&文:坪倉 兌雄)

 yabunikkei 1ヤブニッケイの高木(龍野ヶ岡自然の森にて)ヤブニッケイ(藪肉桂) 
Cinnamonum japonicum クスノキ科クスノキ属

ヤブニッケイは福島県以西の本州、四国、九州、沖縄に分布する常緑の高木で、山地に生え、高さは15㍍になります。
潮風に強く、日陰でも比較的よく育ち、江の島では裏参道の山側、龍野ヶ岡自然の森、海辺などで普通に見ることができます。樹皮はなめらかで灰褐色を呈し、ニッケイ(肉桂)に似た香気と渋味があり、浴湯料にするとリューマチや腰痛に効果があるとされています。
葉の表面は光沢のある濃緑色で革質、明瞭な3本の葉脈(三行脈)が目立ち、長さは6~12㌢の長楕円形で互生し先がとがります。6~7月、葉腋から伸びた長い花軸の先端から散形花序を出して、淡黄色の小さな花をつけますが、筒形の花被は平開しないで上部が6裂に、雄しべは12本で4輪にならび、雌しべは1個。果実は液果で長さは1.5㌢ほどの球形で果床は杯形。10~11月に黒紫色に熟し、中に種子が1個あります。

yabunikkei 26~7月、散形花序をだして淡黄色の花をつける yabunikkei 3筒形の花被は平開しないで上部が6裂に
yabunikkei 4葉は革質で光沢があり3脈が目立つ yabunikkei 5果実は液果で楕円形 yabunikkei 6果実は晩秋に黒く熟す
   
 名前の由来は、同じクスノキ科の肉桂(ニッケイ)に比べて、劣る(役に立たない)ことからヤブ(藪)をつけたものとされ、肉桂の名は、中国では香木を「桂」と呼び、厚い樹皮「肉」であることから、肉桂になったとされています。ニッケイは中国雲南省やベトナムがその原産地で、葉や樹皮、根の皮に強い香りをもつ精油を含み、生薬名「桂皮(けいひ)」として健胃薬に、また香辛料などに用いられています。クスノキ科の植物は世界に約31属2000種以上あるとされ、全体に芳香のある揮発油を含むものが多く、身近なところでは、樟脳や樟脳油をつくるクスノキや、月桂油をとり香水や料理の香辛料に用いるゲッケイジュ(月桂樹)などがよく知られています。江の島で見られるクスノキ科の植物には、ヤブニッケイ、クスノキ、ゲッケイジュの他に、タブノキ、シロダモ、ハマビワなどがあります。