江の島の植物・落葉小高木 ≪ サルスベリ ≫

2015年8月12日  (写真&文:坪倉 兌雄)
 sarusuberi 1奥津宮境内に咲くサルスベリ(龍野ヶ岡自然の森入り口)サルスベリ(猿滑り・百日紅) Lagerstroemia indica  
ミソハギ科サルスベリ属
サルスベリは中国の南部原産で、日本には江戸時代以前に渡来したとされ、本州の東北南部から、四国、九州に分布し、江の島では江の島大師や江島神社境内などで見られます。樹高は3~8㍍、幹は滑らかで曲がって伸びるため定まった樹形にはなりません。樹皮は淡褐色で薄く、はげ落ちたあとが白く見え、樹肌がすべすべとしています。葉は倒卵状楕円形で長さは5~8㌢で全縁、葉の先端がすこし凹ものや尖るものがあり、表面は濃緑色で裏は淡黄緑色、葉柄はほとんどなく、対生または互生し、ときに2対互生のコクサギ型になります。7~9月、枝先の円錐花序に直径3~4㌢の紅紫色の花を次々に開き、花弁は6個で、ふちのしわが目立ち基部は急に細くなります。中央の黄色の葯をもつ雄しべは不稔性で、長い花糸をもつ6個の雄しべに捻性があります。 
 sarusuberi 2幹は平滑でこぶが多く淡褐色  sarusuberi 3円錐花序をだし花弁は6枚で花びらは縮れる
sarusuberi 4葉は2対互生で対生  sarusuberi 5剥げ落ちた樹皮のあとが白い  sarusuberi 6果実は蒴果で6裂に

雌しべは中央に1本。花後に1~1.5㌢の球形の果実(蒴果)をつけ、中に多数の種子があり、熟すとはじけて種が散ります。
サルスベリは通常の落葉性花木と異なり、フヨウやムクゲなどと同じように芽吹きが遅く、当年枝に花をつけるために花期が長く、夏から秋まで咲き続けます。花の少ない真夏の時期にきわだった花を咲かすことから、庭木や街路樹、公園樹として植栽されます。うどんこ病にかかりやすい難点はありますが、近年、品種改良によって病害虫に強い園芸品種も市販されています。名前の由来は、木肌が滑らかで、木登りの得意な猿でも滑るであろうと「猿滑り」に、また花期が長いことから「百日紅」の別名もあります。仲間のシマサルスベリは、奄美大島や沖縄などの亜熱帯に自生していますが、葉が有柄で葉先が細くとがり、裏面の主脈に白い開出毛があり、7~8月、円錐花序に小さな白い花を多数つけます。