江の島の植物・落葉高木≪カンザン(関山)≫ 

2016年3月23日  (写真&文:坪倉 兌雄)
 kannzann 1江島神社・奥津宮境内に咲くカンザン江の島の植物・落葉高木 ≪カンザン(関山)≫   

Prunus lannesiana cv. Sekiyama バラ科サクラ属 
カンザンはオオシマザクラ系のサトザクラで、セキヤマとも呼ばれ、明治期に荒川堤から全国に広まったとされており、関東でも一番よく目にする八重咲きの桜です。病害虫に強く、耐寒性があり北海道の松前などでもよく生育します。樹勢がよくて高木になり、小枝を多く出して花が垂れ下がって咲きます。花弁は42~50個と重ねが厚く、濃紅色の豪華な大輪の花を盛んに開くことから、国内はもとより海外でも人気があります。葉は長卵形で厚く長さは7~15㌢、ふちには鋸歯があり先は鋭く尖ります。花弁は濃紅色で直径5~6㌢の大輪、花弁の長さは1.8~2.5㌢で、先は多裂してねじれやうねりが見られます。萼筒はろうと形で長さは3~4㍉と短く、小花柄と共に無毛。萼片は5個で長さは5~8㍉、内側に巻きこみます。

kannzann 2萼筒はろうと形で萼片は内側に巻きこむ kannzann 3濃紅色の豪華な大輪の花を開く
 kannzann 4小枝を多く出して大きな花をつける   kannzann 5奥津宮境内に咲くカンザン  kannzann 6盛りを過ぎて散る花びら
  江の島では江島神社・奥津宮境内に咲き、オオシマザクラやソメイヨシノが散った後の、4月中旬が一番の見頃となります。名前の由来は不明ですが、学名はセキヤマで登録されています。 カンザンの開きかけの花は、梅酢や食塩に漬け込んで熟成させ、桜湯にして結婚式などのお祝いの席などで用いられますが、美しい八重の花とそのほのかな香りが、幸せな雰囲気をさらに盛り上げます。もともとサクラの葉や花の細胞にはクマリン配糖体が含まれており、塩漬けなどにすると細胞が壊れて配糖体が分解し、クマリンが生成されて独特の香りを放ちます。奥津宮境内では、同じ栽培品種で、八重咲きのフゲンゾウ(普賢象)も同時期に開花します。花の中央の2本の雌しべが緑色の葉のようになって突出ることから、これを普賢菩薩の乗るゾウの鼻または牙に見立てて名付けられたとされていますが、このフゲンゾウの花もカンザンと同じように桜湯に用いられます。