江の島の植物・落葉高木≪コナラ(小楢)≫

2016年5月11日  (写真&文:坪倉兌雄)
 konara 1裏参道の山側に生えるコナラの大木コナラ(小楢) Quercus serrata  ブナ科コナラ

コナラは北海道から本州、四国、九州に分布する落葉高木で雌雄同種、クヌギなどとともに関東の雑木林の代表種で、日当たりのよい山地に見られ、高さは15~20㍍以上になり、樹皮は灰黒色で縦に不規則な裂け目があります。江の島では裏参道わき(山側)に1本の高木があり、高さはおよそ15㍍、枝は四方に広く展開して大きな樹冠をつくっています。
葉は有柄で長さは5~15㌢の倒卵形~倒卵状長楕円形で互生し、先はとがり基部はくさび形、ふちには鋸歯があり、裏面は星状毛や絹毛で灰白色を呈します。4~5月に開花、本年枝の下部に長さ6~9㌢の雄花序を多数垂らし、花は黄褐色で小さく花被は5~7裂して雄しべは4~5個あります。一方、雌花序は本年枝上部の葉のわきから出て、総苞に包まれた雌花が1~2個または数個つきます。

 
konara 2垂れ下がる雄花序 konara 3樹皮は灰黒色で縦に不規則な裂け目がある
konara 4葉は互生し倒卵状楕円形 konara 5葉の裏面は灰白色を呈します konara 6コナラ(上)とクヌギ(下)の落ち葉
10~11月、果実は楕円形で長さ1.5~2.5㌢の堅果(どんぐり)で褐色に熟し、殻斗(総苞)には鱗片状突起(総苞片)が瓦重ね状に覆います。コナラやクヌギなどで構成される里山(雑木林)は、かつてはキノコがり(茸狩)や子供の遊び場として、コナラやクヌギの材は薪炭などの燃料に、シバ(柴)や落ち葉は家畜の飼料や肥料に用いられてきましたが、昭和30年以降の燃料革命以来、化石燃料の普及により薪炭生産は衰退し、農耕の機械化、科学肥料の普及で里山は放置されて荒れ放題、またスギなどの植林や宅地造成などにも転用されて、かつての里山を身近に見ることも少なくなりました。名前は同じブナ科のオオナラ(大楢:ミズナラの別名) に対して、愛称の接頭辞としてコ(小)を冠せてコナラ(小楢)になったものとされ、材はシイタケの原木以外に、コケシや器具材、印材などに、また公園樹としても利用されています。