江の島の植物・落葉低木≪オオムラサキシキブ(大紫式部)≫

2016年6月8日  (写真&文:坪倉 兌雄)
 oomurasaki 1江の島の海側に茂るオオムラサキシキブ Callicarpa japonica var. luxurians
クマツヅラ科ムラサキシキブ属

オオムラサキシキブはムラサキシキブの変種とされ、神奈川県以西~沖縄の暖地の海岸近くに生育します。江の島では裏参道の海側斜面や参道わき、龍野ヶ岡自然の森などで見ることができ、高さは2~3㍍に、花序や果実がムラサキシキブより大形で枝も太くなります。葉序は対生し、葉柄は1~1.5㌢、葉の質は厚くやや光沢があり、長さは10~25㌢、幅6~10㌢の楕円形または長楕円形、ふちには細かい鋸歯があり、裏面に腺点があります。6~7月、葉腋に大形の集散花序をだし、花の長さは6~8㍉の筒状で直径はおよそ4㍉、淡紫色の花を多数つけます。花冠の先は浅く4つに裂けて反り返り、雄しべは4個、雌しべは1個でいずれも花冠の外へ長く突き出て、雄しべの黄色い葯と、長くて白い雌しべがよく目立ちます。果実は緑色の球形で光沢があり、直径が約5~6㍉、10~11月に紫色に熟します。

oomurasaki 2オオムラサキシキブの花と蕾 oomurasaki 3雄しべと雌しべは花冠からそとへ突出る
 oomurasaki 4果実は球形で光沢がある   oomurasaki 5葉の比較   oomurasaki 6ムラサキシキブの果実
和名は、紫色の果実の美しさを源氏物語の作者である「紫式部」の名を借りて名付けたものとされ、属名のCallicarpaはギリシャ語kallos(美しい)とkarpos(果実)に由来し、種小名japonicaは「日本の」を意味します。江の島にはムラサキシキブが自生し、また植栽された紫式部の近縁種とされるコムラサキも見かけますが、それぞれに葉の大きさが異なります。ムラサキシキブの葉の長さは6~13㌢で葉柄は0.2~0.7㌢と、オオムラサキシキブの葉に比較して小さく(写真参照)、花序や果実もやや小ぶりで枝も細くなります。コムラサキの樹高は1~1.5㍍で、葉の長さは3~7㌢とさらに小さく、果実の直径は約3㍉ですが、美しい紫色の果実を豊かにつけることから人気が高く庭木としてよく用いられています。