江の島の植物・落葉蔓性 ≪アオツヅラフジ(青葛藤)≫ 

2016年8月10日  (写真&文:坪倉 兌雄)

 

 aotudurafuji 1江の島の海辺を這うアオツヅラフジCocculus trilobus  ツヅラフジ科アオツヅラフジ属 
ツヅラフジは、蔓性落葉木本で雌雄異株。北海道から本州、四国、九州、沖縄に分布し、江の島では日当たりのよい参道わき、龍野ヶ岡自然の森や海辺などで普通に見ることができます。緑色の若いつるには細かい毛が密生し、枝分かれしながら藪状にのびますが、樹木に絡まって高くよじ登ることはほとんどありません。葉は互生し表面に短毛が密生しますが、やや光沢を帯びます。長さは3~12㌢で広卵形、ふちは全縁でときに浅く3裂するなどの変化があります。葉柄の長さは1~3㌢で短毛があります。7~8月、葉腋から小形の円錐花序を出し、黄白色の目立たない小さな花を数個開きます。萼片は6個あり、外側の3個は小さく内側の3個は大きくなります。花弁は6枚で先端が2裂し、雄花には雄しべが6個、雌花には雌しべ6個と仮雄しべが6個あります。果実は核果で直径6~7㍉の球形、房状に結実して緑色から青色に変わり、10~11月には白粉を帯びた藍黒色に熟します。 
 aotudurafuji 2ツヅラフジの雄花  aotudurafuji 3ツヅラフジの雌花 
 aotudurafuji 4裏参道海側で   aotudurafuji 5果実は熟して青から藍黒色に  aotudurafuji 6ツヅラフジの葉

アオツヅラフジはアルカロイドを含む有毒植物で、ツルや根を日干しにして、生薬では木防己(もくぼうい)といい利尿や関節炎に用いられますが、素人処方は危険であり、もちろん果実も食べられません。名前はこのツルで編んだ蓋付きの籠を葛籠(つづら)といい、衣服などの収容に用いられたことに由来します。江の島では同属のツヅラフジが、木によじ登って茂っているのをよく見かけますが、葉の長さが6~15㌢と大きく、円形または腎形で5~7裂することから区別できます。万葉集には、女性が男性にあてた恋歌が「磯辺に生える浜つづら」で詠まれています。
               駿河の海 磯辺(おしべ)に生ふる 浜つづら 汝(いまし)を頼み 母に違(たがい)ひぬ

 (巻14-3359詠人未詳)