江の島の植物・落葉高木≪カキノキ(柿木)≫
2016年10月12日 (写真&文:坪倉 兌雄)
![]() 本州、四国、九州の山地に自生するヤマガキ(var. sylvestris)は、樹高が5~15㍍に、樹皮は灰褐色で縦に裂けます。葉は互生して長さ7~15㌢の広楕円形、ふちは全縁で先端は尖り、表面の主脈に毛があり、裏面には褐色の毛が密生します。6月頃、黄緑色の花をつけ、花冠は壺形で4裂、子房に毛があります。果実は液果で小さく、10月頃に熟します。カキの実は秋の風物詩ともいわれ、美しい景観をつくります。江の島では品種の確認はしていませんが、サムエル・コッキング苑、江の島大師境内、奥津宮の境内などでカキノキを見ることができます。柿にはポリフェノール系の一種で渋味の成分であるタンニン(水溶性)を含み、唾液に溶けると渋味を感じます。干し柿にすると、澁柿のタンニンは不溶性になり渋味を感じなくなります。甘柿のタンニンは熟すと自然に不溶性に変わります。完全甘柿の代表的な品種に、ジロウ(次郎)やフユウ(富有)がよく知られています。両者の違いは、ジロウは四角でやや平べったく、起伏があり側面に浅い線状の窪みが見られます。果肉には果汁が少なく硬めです。フユウはやや丸く表面に光沢があり、果肉に果汁が多くて軟らかいです。 |
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カキノキの花は6月頃に黄緑色の花を開きます。花の構造は短い花柄に支えられた萼片の上部に黄色の花冠があり、基部は融合して壺状になり、先端が4枚の花弁に分かれています(写真参照)。萼の上部に雌しべの子房(生殖部)があり、花柱の先端には分化した柱頭が見られます。子房は無毛で、その回りには雄しべの花糸が数本と、先端には花粉をつくる葯がつきます。花は役割を終えると、花弁や雄しべは脱落しますが、萼片はそのまま雌しべと共に残ります。このようにカキの子房は萼片や花弁の上に位置し(子房上位)、そのまま成長して果実になるため、これを真果といい、一方、リンゴやビワなどのように子房が花弁や萼片の下にあり(子房下位)、おもに花床筒が肥大して果実になるものを偽果といいます。カキの語源には、あかき(赤木)の上略とする説などがあります。 |