江の島の植物・常緑低木 ソテツ 

2017年6月8日  (写真&文:坪倉 兌雄)
sotetu 1 ソテツ Cycas revoluta ソテツ科ソテツ属 

ソテツ(蘇鉄)は裸子植物の常緑低木で雌雄異株。九州南部や沖縄の暖地の海辺や崖などに自生し、公園などによく植えられています。ソテツは根に藍藻(らんそう)類を共生させ、それらが窒素固定能を持つために、岩場などの瘦地でも生育することができます。
江の島では恵比寿屋や岩本楼の中庭、西緑地、神社境内、江の島大師、サムエル・コッキング苑などで樹齢を重ね、枝分かれした大きなソテツを見ることができ、住宅の庭先などでは、鉢植えされたソテツも見られます。ソテツの樹高は1~6㍍になり、茎は太い円柱形で、その全面に葉が落ちたあとが見られます。葉の長さは0.5~1.5㍍の大形羽状複葉で、茎の先に叢生します。小葉は線形で光沢があり長さ8~20㌢、先は鋭く尖り触ると痛みを感じます。
花期は6~8月、雄花は茎と同じ太さの長い松毬を伸ばして茎の先端につき、その鱗片が雄しべで裏一面に袋状の葯(小胞子嚢)をつけます。 

            歴史を刻む中津宮境内のソテツ
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 雄花は茎と同じ太さの長い松毬を伸ばす 
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 雌花は茎の先端に丸いドーム状に膨らむ
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 雄蕊の鱗片裏に袋状の葯が 
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 綿毛が密生する胞子葉と種子 
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 翌年に萌え出た新葉 

 雌花は雌しべ(大胞子葉)で形成され、茎の先端にドーム状に丸く膨らみ、個々の胞子葉の上部は羽状複葉の葉形となり、淡褐色の綿毛が密生します。「胞子葉の基部には3~6個の胚珠がつき、雄花の花粉がこの胚珠の先端に付着すると発芽して花粉管が形成され、ここから鞭毛をもつ精子が出てきて卵細胞へと泳ぎます(参考文献・植物自然史/戸部博著、1994)」。受精後、成熟した種子は長さ3~4㌢の卵形で光沢のある朱赤色になります。翌年の春には、雌株の上部の花の真ん中から新葉が萌え出て新しい葉に入れ替わります。ソテツの種子には、発癌性物質であるアゾキシメタンを含む配糖体サイカシンを含むとされ、そのまま食用に用いるのは危険です。名前は「枯れかかったとき鉄釘を打ち込むと、元気になる(蘇る)」ことに由来するとされています。
 【写真&文:坪倉 兌雄】