江の島の植物・ガガイモ(蘿藦)
2017年08月08日
Cynanchum japonicum キョウチクトウ科ガガイモ属

他の植物の上に覆いかぶさり繁茂するガガイモ
ガガイモはつる性の多年草で、北海道、本州、四国、九州に分布し、江の島では海沿いの山側、広場のフェンスや参道わきなどの日当たりの良い場所で普通に見ることができます。地下茎を横に伸ばして増えますが、イモは形成しません。茎は長く伸びて他の植物の上に覆いかぶさって繁茂し、つるや葉などを切ると白い乳液が出ます。葉は対生し、長卵状心形で長さは5~10㌢、全縁で表面は緑色、裏面は白緑色を帯びます。花期は8~9月、葉腋から長い花柄を出して淡紫色の花を総状花序につけます。花冠はおよそ1㌢で5裂に、裂片の先はそり返り、内側には長い毛が密生します。中心部にはずい柱(雄しべと雌しべが合体したもの)があり、柱頭は長く花冠から突き出ます。果実は袋果で長さ8~10㌢、幅は2㌢と大型で表面には不規則な突起があります。晩秋、熟した袋果は2つに割れ、偏平楕円形の種子には毛足の長い白毛があり、風に乗って散布されます。ガガイモの果実を乾燥させたものを生薬で蘿藦子(らまし)といい、薬用に用います。





茎から出る液汁は虫刺されなどに効果があるとされ、種子の毛は綿の代わりに針さしや印肉に、また切り傷の止血などにも用いられました。名前の由来には諸説あり、一定していません。古事記の国つくりの中に、ガガイモの船としてその名が登場します。"大国主神が出雲の御大之御崎にいるときに、飛沫立つ波頭を伝い、天の蘿藦船(ガガイモの船)に乗り蛾の皮を身にまとってやって来る小さな神様がいました。名前を聞きましたが誰も知りません。ガマガエルが「この神様については久延毘古(クエビコ)なら必ず知っているでしょう」と言ったので、訪ねると、「神産巣日神の御子、少彦毘古那神ぞ」と答えた."とあります。古代に思いを馳せながら、ガガイモの袋果を手の平に乗せ、凝視すると小さな船になりました。
【写真&文:坪倉 兌雄】
【写真&文:坪倉 兌雄】
